新奇酸化物発光体の開発

私たちの研究室では薄膜技術、微細加工技術を用いて新しい発光体の開発を行っています。

SrTiO3はバンドギャップが3.2eVの間接遷移型の絶縁体で、室温では紫外線などによる励起を行っても発光しませんが、低温では自己束縛励起子による緑色発光を示します。SrTiO3のSr2+をLa3+で置換したり、酸素欠損を作ったりすることで電子ドーピングすると室温でも青色領域で発光することを発見しました。さらに、100K以下の低温に冷却すると青色領域の発光は390nmをピークとする紫外域へ移動し、ピーク幅も非常にシャープなものに変わります。この発光はSrTiO3のバンドギャップに近く、伝導帯直下に酸素欠損に由来する準位が形成され、その電子とホールが再結合することにより発光していると考えています。これらの結果は酸素イオンのpバンドにできたホールと遷移金属イオンのdバンド電子の結合に由来するもので、遷移金属酸化物に固有な「pホール」の物理の好例になるものと思われます。今後、新規な発光デバイスの開発につながるものと期待しています。また、フォトリソグラフィーとAr+イオン照射を組み合わせると簡便に局所的な還元構造を作ることができ、任意の大きさ・形の青色発光素子を作成することが可能になります。

SrTiO3単結晶にAr+イオンビームを照射することで酸素欠損を生成することができます。
酸素欠損を有するSrTiO3のフォトルミネセンススペクトルの温度変化