私達の研究室では新物質の開発、結晶成長という固体化学的な興味から無機化合物、特に遷移金属酸化物の薄膜研究を進めています。
通常、酸化物を中心とした無機化合物の合成は原料となる化合物を秤量し、乳鉢で混合、電気炉で加熱して反応させるという方法が採られます。これは固相反応法と呼ばれますが、何種類かの原子をある比率、温度で平衡状態に置いたとき、エネルギー的に安定な配置に落ち着く(つまり結晶ができる)という原理、つまり熱力学に支配された合成方法です。そのため、これこれの原子がこういう配置で結晶を作ったら面白い物性が発現するのではないかと思っても、なかなか思い通りのものはできません。
高圧合成法も固相反応法ですが、圧力というパラメータを一つ増やすことで、常圧で安定な構造よりも密度の高い構造などを合成できるため、作製可能な物質の範囲は広がります。
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