研究指針

21世紀を迎え人間と環境の調和が研究活動における主要なキーワードと位置づけられるようになり、物質科学の分野においてもこれからの社会の変動に迅速に対応し、人間の生存圏を豊かに拡充させていく優れた機能を有する新規物質の開発が望まれています。本グループでは遷移金属酸化物を中心に電子・磁気・光の新奇な量子原理に基づいた機能を実現するための物質開発・複合微細構造体の構築を研究テーマとして、主に薄膜作製/界面・表面の作製・制御について研究を展開してきました。遷移金属酸化物の薄膜研究は1986年の高温超伝導体の発見を契機に作製方法、評価方法が飛躍的に発展を遂げ、特に超伝導体、誘電体、磁性体の分野で著しく進歩しています。本グループでは1980年代初頭から遷移金属酸化物の薄膜研究において先駆的研究を行ってきています。今後も、その実績を活かし、未来型物質・機能の開発を行い、低温・物質科学における新しいフィールドを開拓することを目指し研究を推進しています。

研究手法として分子線エピタキシー、レーザーアブレーション、スパッタリングなどの薄膜作製法、集束イオンビーム、電子線リソグラフィーなどの微細加工法などのナノ・メゾテクノロジーを駆使して、遷移金属酸化物を中心とした無機化合物(含金属間化合物)のエピタキシャル薄膜、人工格子(ヘテロ構造)、微細構造体を作製し、超伝導、磁性、誘電性、光学的性質において新しい機能を有する物質・素子開発を行っています。

遷移金属化合物には超伝導、磁性、誘電性、光学的性質などで半導体など他の物質群にはない優れた性質があり、新規分野を開拓できる高い潜在的能力があります。その実現にあたっては、良質な試料の合成方法の探求はもとより、半導体に比較してより複雑な表面・界面における機能活性層の形成・理解を強力に推進する必要があります。今後、遷移金属化合物のナノスケール科学を発展させていくため、金属、半導体など隣接した分野の研究者との協力体制をより充実させ、さらには有機化学・物性科学の研究者との境界的な研究領域も創生していきます。今後ますます重要性の増す遷移金属化合物を研究の機軸とし、激しく変革していく時代を主体的に開拓していくべく研究を推進します。