酸化物薄膜の強力酸化による異常高原子値状態の実現

薄膜は表面が広く、薄いという形態のため、酸素が試料全体に拡散しやすく酸化、還元を行いやすいことも特徴です。酸化力の強いオゾンガスを使うことで、バルク試料の合成では数万気圧での酸化処理が必要なFe4+という高原子値状態を持つSrFeO3、CaFeO3などの作製が可能なことがわかりました。銅酸化物高温超伝導体をはじめ多くの電気伝導性遷移金属酸化物では、酸素イオンの2p軌道にホールの入った状態が重要ですが、このような状態は遷移金属元素の形式電荷が高い場合に顕著に現れてきます。そのため、薄膜を用いた遷移金属の高酸化状態の実現は新物質の合成にとって重要な手法になってくると思われます。