学部生の皆様へ

 ナノ量子物性(旧低次元量子凝縮系物理学)研究室への進学のすすめ

  我々の研究室では、粒子が自由に動ける空間の次元を制限すると、どのような面白い物理現象が現れるか、研究しています。3次元空間でどんなに制限をしても理想的な低次元空間は出来ないと思うかもしれません。しかし温度を下げると、2次元面に垂直な方向の空間制限によって生じる大きな励起エネルギー準位へ熱励起することができなくなり、理想的な低次元システムが実現します。この様な理想的低次元システムでは、3次元システムでは見られない特異な物理現象が現れます。
  低次元システムの中でも2次元システムは特異な面白い次元です。その面白さの多くはフェルミオン、ボソンという粒子の統計性を変換できる特殊な次元であることに由来しています。量子力学の体系は、ゲージ変換に対して物理現象が変わらないように作られていますが,これをゲージ普遍性と言います。2次元で粒子の統計性が変換できるのは、このゲージ普遍性があるためです。ゲージ普遍性は基礎物理学の重要法則であり、理論の骨格を担う法則です。
  2次元電子システムが示す特異な物理現象のひとつに、量子ホール効果があります。量子ホール効果は、超低温強磁場で半導体界面に理想的2次元電子状態が実現することによって巨視的な量であるホール抵抗が量子化し,磁気抵抗がゼロになる現象です。20世紀後半に発見された固体物理学における最も興味深い現象と称されるほど特異性があります.
  我々のグループでは、量子ホール状態を磁束量子と電子を合わせた複合ボース粒子のボース凝縮状態ではないかとの新しい観点から研究を進めています。超流動・超伝導もボース凝縮状態であり、ボース凝縮は物理研究者の最も興味ある研究対象のひとつです。私たちは、2層2次元電子系のランダウ準位占有率ν=1および2量子ホール状態が、2層の電子密度差を自由に変えても安定な量子ホール状態であることを明らかにしました。この量子ホール状態には、巨視的量子コヒーレンスと呼ばれるボース凝縮状態特有の現象の存在が期待できます。この研究を進め、量子ホール状態がボーズ凝縮状態であることを実証することが当面の研究課題です。2次元電子系においてボーズ凝縮の存在を実証することは、2次元における粒子の統計変換の確立を目指す基礎物理学の観点から強く望まれているものであり、ぜひ柔軟な思考を持った意欲的な若い人の活躍が必要です。

注)
1985 Klaus von Klitzing 整数量子ホール効果の発見
1998 Robert B. Laughlin, Horst L. Stormer, Daniel C. Tsui 分数量子ホール効果の発見

(文責 澤田安樹)

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大学院入試情報の詳細に関しましては、こちらを参考にしてください。院試の過去問などもあります。また、大学院について詳しく知りたい学部生のために、毎年5月ごろ、理学研究科物理学教室においてローレンツ祭が開かれています。本研究室も参加しておりますので、ふるって御参加ください。
○2004年のローレンツ祭の本研究室のパンフレット
○2005年のローレンツ祭の本研究室のパンフレット
○2005年のローレンツ祭パーティーで配布したパンフレット
○2006年のローレンツ祭パーティーで配布したパンフレット
○2009年のローレンツ祭パーティーで配布したパンフレット

 研究室見学について

本研究室では、京都大学理学部の学部生のみならず、京都大学理学部以外からの進学希望者も広く受け入れています。もし、本研究室に興味をお持ちの学部生の皆さんは、気軽に研究室に見学にお越しください。研究室に見学に来られる際には、必ず電話かE-mailで日時等をご相談くださるようにお願いいたします。

 量子ホール効果についてさらに勉強するために

などを参考に読んでみて下さい。

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